米田
規子 俳句集(1995-1999年)
響焔1995年7月号掲載
白灯集
新緑やピアノ教師という仕事
藤の花気の進まない日もありて
休養をしたい日庭の車輪梅
子育てにひと区切り柿若葉かな
愛車拭き小鳥の声と新緑と
響焔1995年8月号掲載
白灯集
子の悩み聞いてそら豆むき始む
親離れもうすぐそこに夏蓬
自己主張うまく出来ずに栗の花
マイペース乱されがちに花南天
家事終えて溜息ひとつ梅雨の月
響焔1995年9月号掲載
白灯集
ケーキ焼く匂いなどして梅雨一と日
鬼百合に句会発足晴れ間見え
忙しさのピークを越えて梅雨明ける
指揮者役果たしピンクの百合匂う
絵の道を選べる吾子に立葵
響焔1995年10月号掲載
白灯集(巻頭)
パリ目指す機翼夏日の輝けり
蜜蜂の親しげに来るカフェーかな
川面より涼風シャトーそびえ立つ
夕焼けやフランス大地果てしなく
草いきれ自転車押して坂上がる
響焔1995年11月号掲載
白灯集
おおかたは中流家庭初サンマ
台風接近黒猫ひざに乗りたがる
虫時雨眠くなるまで本読んで
起床時間朝はゆるやか虫の声
法師蝉足を投げ出しひとりなり
響焔1995年12月号掲載
白灯集巻頭作家・特別作品
秋そうび 米田 規子
変貌する街秋の日の和菓子店
行く街の日なた日陰に木の実落つ
上向きの気持ち蕾の秋そうび
家いえに小菊があふれ買物に
一年のあれこれが見え稲稔る
秋桜午後の静かなショベルカー
午後からはピアノ教室たわわ柿
帰宅する時間それぞれ茸飯
ひとつ終えまたひとつ終え暮の秋
ピアノ閉じ夕餉の支度秋刀魚焼く
白灯集
散策の終わりに近く懸巣鳴く
行き着けばロックのリズム葉鶏頭
若者の熱気に触れきて秋夕焼
桜紅葉ふるさとの友集まりぬ
つぎつぎに話すことあり猫じゃらし
響焔1996年1月号掲載
白灯集
バレエ観てきらめく街の灯秋の暮
助手席に葱が三本帰路急ぐ
久々に夫にファックス冬三日月
父母帰り白の山茶花咲き始む
実南天子の絵画展無事終わる
響焔1996年2月号掲載
白灯集
検査結果良くとびとびの冬の雲
冬紅葉今朝おだやかに子を送る
毎日が充実色濃い実南天
帰国した夫の仕事の餅を切る
数え日や腕まくりして皿洗う
響焔1996年3月号掲載
白灯集
冬木に芽ときには父親役もして
ピアノ俳句どちらも捨てず冬珊瑚
あしたからいつもの日課青木の実
新しい友増え丸い冬レモン
シクラメン誰もおらないような午後
響焔1996年4月号掲載
'95年度白灯集巻頭作家10句競詠
キッチン 米田 規子(十月号巻頭)
キッチンはわたしの書斎春の雨
郵便夫素通りしてゆき沈丁花
申告を済ませ川面に春陽射し
バラ芽吹き旅のプランの本決まり
春キャベツ刻んで刻んでパリ想う
春日射し仕事の前に米を研ぐ
筆洗う子の丸い背や春愁う
春の闇猫の目何かを察知して
巡り来る日曜つんつん桜草
駆け足で少女大人へフリージア
白灯集
寒鯖も干さる鎌倉裏通り
冬日向身代り地蔵におじきして
レモネード娘に秘めごとのあるらしき
よく歩き真冬の赤いトマト買う
パンジーの黄赤紫待ち合わせ
響焔1996年5月号掲載
白灯集
宇治川のたゆとう流れ春景色
撮影は父母真ん中に芽吹く山
母の歩の遅きが悲し紅椿
白南天ほどよく疲れ茶ソバ食う
選び買う母に似合える春の帽
響焔1996年6月号掲載
白灯集
おぼろ月遠くの国に夫がいて
春愁やグランドピアノの黒光り
蝶舞えりただそれだけの幸があり
あわあわと日曜暮れる豆の花
若楓子に頼らるはいつまでか
響焔1996年7月号掲載
白灯集
離れ住むわれら銀婚若葉萌ゆ
夕闇に白鉄線花安らぎぬ
若楓雨に俯く日のありて
これからもライバルは夫柿若葉
長男とブランデー飲み春惜しむ
響焔1996年8月号掲載
白灯集
雨粒は泪まっかな薔薇を剪る
あのころの母に会いたき新馬鈴薯
六月の太陽みんなを働かせ
日焼けして少年無口ピアノ弾く
留守がちの隣家さやさや小判草
響焔1996年9月号掲載
白灯集
しなだれる七夕飾りに願い百
製作に励む子梅雨の赤い月
フルートの音色澄みゆく梅雨の月
夏期合宿へ大き荷物を軽々と
グラジオラス年に一度の面談日
響焔1996年10月号掲載
白灯集
兄いもうと話が合いて西瓜食う
大工左官帰り間近の蝉の声
雑用が片付き昼顔咲きのぼる
三日月やエプロンのままピアノ弾く
良い知らせトンボ右から左から
響焔1996年11月号掲載
白灯集
子に贈る百合の花束バレエの夜
夫留守の三年を経ぬ虫の秋
虫時雨顔揃うまで待つ夕餉
エレベーター秋の空へと階重ね
秋霖やソプラノ耳に残る帰路
響焔1996年12月号掲載
白灯集
父病んで芒大きく波打てり
吾も染まり秋の色濃き加賀平野
ポケットに椎の実ふたつ旅終る
一年が濃く過ぎ落葉始まりぬ
膝掛けがやわらか一人の良き時間
響焔1997年1月号掲載
若葉句会報
父病むや芒大きく波打って
秋霖やソプラノ耳に残る帰路
白灯集
好物の焼芋一本母見舞う
大根のみずみずしきを父と掘る
おでん鍋口数少ない父と居る
冬俄やさしき人に電話せり
日常を少し抜け出てポインセチア
響焔1997年2月号掲載
白灯集
赤い色のスカーフが好き人に逢う
横浜線に乗り換え紅葉鮮やかに
食卓にキャンドル家族のクリスマス
銀杏散るコーヒーの香のゆらめきに
若葉句会報
あつあつの焼芋一本母見舞う
ベーコンのちりちりと焼け霜の朝
赤い色のスカーフが好き人に逢う
白百合のような君居てあたたかし
小さな手が弾くジングルベル暮の秋
日常を少し抜け出てポインセチア
辛夷の芽息弾ませる坂の寺
響焔1997年3月号掲載
白灯集
皆を呼ぶ年越そばに大き海老
甥三人ぐんぐんと伸びお正月
母に習うお手玉遊び夜の雪
破魔矢揺れふるさと離る汽車の窓
初便りの友ウィーンに住むつもり
若葉句会報
飼い猫にストレスたまり松明ける
響焔1997年4月号掲載
白灯集
クロッカス夫に頼れぬことが増え
母に送る誕生カード春そこに
春一番ピアノを走る指なめらか
ゆとり欲しき心にまるく冬の月
風邪の子と過ごすひと日をおだやかに
若葉句会報
フリージアピアノはその人のために
響焔1997年5月号掲載
白灯集
父逝きぬ桜見ること叶わずに
春の闇父の声かと耳澄ます
花蘇枋母をひとりにしてしまう
父の死を越えんとしおり若楓
傘三本干してみどりの平和の日
若葉句会報
カレンダーに三月の色父生きよ
響焔1997年6月号掲載
白灯集
病室に春夕焼けの届かざり
牡丹の芽母ひたすらに父を看る
住み慣れし家に子と猫暖かき
下萌えや悲しきときはピアノ弾く
絵の道を選び大学卒業す
カレンダーに三月の色父生きよ
誕生日スイートピーのとぶかたち
薔薇の芽の紅これからの一歩一歩
父の病むふるさと遠し沈丁花
若葉句会報
子のことは長き目で見る草の餅
薔薇の芽の紅これからの一歩一歩
悲しみはふるさとに置き花蘇枋
父の死を乗り越えんとす若楓
リハビリのおとうとに萌え菊若葉
手渡されスイートピーのとぶかたち
意のままにピアノ昂ぶり白き蝶
響焔1997年7月号掲載
若葉句会報
てっせんや父在るごとき生家なり
梅雨夕焼ぽっかり何もない時間
傘三本干してみどりの日の平和
子に習うこと多くなり葱坊主
父恋いの身をひるがえす熱帯魚
響焔1997年8月号掲載
白灯集
翔べるほど自由でなくて藤の花
これからも母すこやかに柿若葉
もやもやと更年期かな走り梅雨
青葉若葉耳にやさしきピアノ音
父恋いの身をひるがえす熱帯魚
若葉句会報
真っ白な皿はキャンバス七月来る
アヴェマリア嘆きのように梅雨の蝶
巴里祭ファックスで知る夫の日々
七月の太陽カッと泣きたい日
響焔1997年9月号掲載
白灯集
しなやかにバレエのポーズ今年竹
青葉騒交響曲を全身に
青年に焼茄子少しもの足りず
白あじさい母の顔して帰宅する
梅雨夕焼ぽっかり何もない時間
若葉句会報
白桃やわたしを追い越す二人の子
枝豆や夫の仕事のはなし聞き
夫パリへ発つ朝夾竹桃の白
やわらかく夏大根母のために
響焔1997年10月号掲載
白灯集(巻頭)
その人を身近に想いソーダ水
青芒かがやく風に明日想う
きょうの疲れ癒されており夏の月
子の皿へ真っ赤なトマト元気出せ
手術までは風切るつもり大夏野
若葉句会報
子の皿へ真っ赤なトマト元気出せ
しらたまや母との時間大切に
手術待つ夏の終わりの赤い月
響焔1997年11月号掲載
白灯集
枝豆や夫の仕事のはなし聞き
皆で祝う子の誕生日盆の月
夫パリへ発つ朝夾竹桃の白
ほのぼのと良きことがあり千日紅
母のためやわらかく煮る夏大根
若葉句会報
柿いろづき街の小さな郵便局
十月の空の深さや少し病む
たわいなき会話に和みふかし藷
栗飯や転職の友ほがらかに
響焔1997年12月号掲載
白灯集巻頭作家・特別作品
大きな林檎 米田 規子
ジーンズが好き金木犀の散歩道
秋うらら水飲む牛と瞳が合いぬ
柿いろづき街の小さな郵便局
ジグザグの細き道抜け秋ざくら
その先を決めかねており秋の蝶
受診終えあかく大きな林檎買う
レモン絞る湯上がりの顔大人びて
子が育ち今日でこぼこのかりんの実
鳥の目となり豆柿の朱いところ
行く秋の鉄塔伸びる段畑
白灯集
二日目のシチューまろやか昼の虫
立ち止まり初心に戻る秋の空
木の実落つあかるき音や友と居て
秋冷や送り出すとき声かけて
子と作る夕餉つやつや秋茄子
若葉句会報
レモン絞る湯上がりの顔大人びて
行く秋の鉄塔伸びる段畑
響焔1998年1月号掲載
白灯集
道標のように猫おり島の秋
迂闊にも秋の風邪などもらいけり
たわわ柿「柿生」という駅通過して
桜紅葉高校までの長き坂
海へ行くバス待ちており冬帽子
響焔1998年2月号掲載
白灯集
聞き役にまわり落葉の赤や黄や
たたき干す青いジーパン鵙日和
銀杏黄葉ぐるっと回りバス発ちぬ
沈黙は金やわらかき冬の雨
ラ・フランス夕餉のあとの安らぎぬ
若葉句会報
どこからかひとりになりて冬木立
響焔1998年3月号掲載
白灯集
葉牡丹を古風とおもうみなとみらい
絵のような裸木ならび休館日
冬三日月ショパンになりてピアノ弾く
冬の滝赤いリュックのふくらみて
どこからかひとりになりて冬木立
響焔1998年4月号掲載
白灯集
通院をきちんと守り水仙花
メガネ光り少年走る冬渚
孤独ともちがう釣り人雪の富士
鳶高く海にまぢかき山眠る
男手の欲しきとおもう寒い朝
響焔1998年5月号掲載
1997年度白灯集巻頭作家特集
卒業 米田規子
柳の芽卒業まぢかき子と歩く
ポピーゆらゆら卒業前の忙しき
三年の想いがあふれ卒業式
顔寄せて卒業の子と写さるる
式終わり雲ひとつなき春の空
もういちど見る卒業証書重きかな
制服の子の白き顔風光る
スイートピーまだまだ先のこと想い
白灯集
あっさりと親離れして冬苺
手作りのフルーツきんとん春たちぬ
入学の手続き済ませ春の土
春葱の束抱え持ち向かい風
迷うだけ迷いクロッカス顔を出す
響焔1998年6月号掲載
白灯集
啓蟄やテディーベアーのつぶらな瞳
木の芽雨電話の母の声やさし
生きのいい魚を提げて春二番
作り溜めし母のお手玉日脚伸ぶ
ほたるいか加賀のフランス料理店
響焔1998年7月号掲載
白灯集
桜咲き老若男女歩け歩け
花の下ほのかな香りたしかめぬ
手術決めたんぽぽの黄を眩しめり
薫風やきらきらと子の歩む道
都忘れ今年よく咲き入院す
響焔1998年8月号掲載
白灯集
病院に夫来る時間初つばめ
青葉若葉オモチャのような電車過ぐ
きょう抜糸五月の空のふわふわ雲
すこしずつすこしずつ癒ゆ柿若葉
響焔1998年9月号掲載
白灯集
ピアノ弾きみなぎる心濃紫陽花
仏桑花飾り農家の野菜売り
新じゃがや元気な母に戻れそう
念願の娘のバイク夏太陽
茄子・トマト暗算速き農婦かな
響焔1998年10月号掲載
白灯集
戻り梅雨つるりと剥けて茹玉子
太陽のエキスのようなトマト食ぶ
苦瓜をうましなど言い子の青春
夏柳夕暮れどきに落ち合いて
サルビア燃ゆこの道をただひたすらに
響焔1998年11月号掲載
白灯集
からからと男声くる木下闇
炎昼のメタセコイヤは淋しい木
したいことできる幸せ花カンナ
家という安らぎありて瓜刻む
四人家族の四人が揃い夕焼ける
響焔1998年12月号掲載
響焔賞 佳作
コンサート 米田規子
早起きの青い林檎とヨーグルト
セピア色のバッハ全集秋日澄む
ベランダにマーチが届き秋桜
和風好きイタリアン好き秋なすび
青蜜柑小さな旅を約束し
雁来紅踊り疲れしトウシューズ
あっさりと指定券とれ赤蜻蛉
トンネルをいくつも抜けて曼珠沙華
ふるさとに母とおとうと衣被
月明の屋根をひょいひょい猫の道
母と歩くゆっくり歩き蕎麦の花
秋冷や本屋のしずかなクラシック
百日紅レッスン前に米を磨ぐ
虫の音に満たされておりピアノ閉ず
横浜に住み慣れ秋のコンサート
白灯集
子は旅へ少し色づき青葡萄
玄関を掃き白い蝶きいろい蝶
自転車の若き父見ゆ芒原
千日紅あきらめないでお母さん
響焔1999年1月号掲載
白灯集(巻頭)
旅というふしぎな時間葉鶏頭
秋の海家を離れてきらきらと
すれすれに車行き交い百目柿
大鍋に肉じゃが作り体育の日
休日をひとりで歩き秋の薔薇
響焔1999年2月号掲載
白灯集
さくら紅葉白秋のうた聴きにゆく
落葉からからフランスへ跳ぶ想い
今朝の冬動く歩道の横あるく
凩やドーナツショップ人あふれ
自転車の籠をはみ出し葱二本
響焔1999年3月号掲載
白灯集巻頭作家・特別作品
赤いセーター 米田 規子
靴音は駅に集まりポインセチア
このまちに友増え紅い冬木の芽
メキシコ産冬至かぼちゃを甘く煮る
クリスマスカードを母へアヴェマリア
待つことに慣れ病院のシクラメン
三毛猫がいつも居る場所冬たんぽぽ
聖菓分けマザーテレサのやさしい瞳
冬木に芽今できること考える
こころざし同じ友持ち花アロエ
母からの赤いセーター年つまる
白灯集
ゴム長がさかさに干され師走漁港
窓ガラス拭き実南天つやつやと
パンジーのあかしろきいろ明日も咲く
銀杏黄葉重い荷物を持ち歩く
裸木にみなぎっているこころざし
響焔1999年4月号掲載
白灯集
太陽に向かって歩きピラカンサ
ワイン付きレディースランチ松明ける
日常の暮らしに戻りシクラメン
胃にやさしい野菜のスープ冬旱
甘納豆と猫ねむい冬の午後
響焔1999年5月号掲載
白灯集
めがね置き今年の雪と母のこと
デッサンのえんぴつ走り冴え返る
五十代近づき紅梅ふっくらと
スランプのその先黄色いクロッカス
四温晴畳にパリの地図広げ
響焔1999年6月号掲載
白灯集
春の土猫のしっぽがピンと立ち
花の冷え全身で弾くピアノソナタ
発表会終わりおぼろの帰り道
教え子と別れの握手木の芽雨
響焔1999年7月号掲載
白灯集(巻頭)
絵画的フランス料理はなぐもり
川沿いにひと駅歩き山桜
遊園地横の銀行チューリップ
ふるさとの和菓子が届き初燕
鯉幟みなふくらんで旧き家
響焔1999年8月号掲載
白灯集
赤いバラ白いバラ咲き子の個展
子に告げる結婚記念日さくらんぼ
青葉若葉コーヒーキャンディ配られて
車椅子ゆっくり押して花菖蒲
旅近き五月の光カフェオーレ
響焔1999年9月号掲載
白灯集巻頭作家・特別作品
フランス・オルレアン 米田 規子
オルレアンへまっすぐに道柳絮飛ぶ
麦畑地平線から雲が湧き
夏の日のたそがれチーズと赤ワイン
香水の匂いに蒸れてパリメトロ
「モネの睡蓮」緑陰の列に蹤き
花マロニエ美術館出て水を買う
ふくよかな白い彫像夏の空
娘への香水を買い旅半ば
麦の秋おもちゃのような石の家
オルレアンの教会の鐘森林浴
白灯集
旅の写真どれも笑って梅雨の月
長男とぼつぼつ話し葛桜
万緑やフランスの子に見つめられ
白アスパラのほのかな甘み明日帰国
きらきらとプールさざめき白チーズ
響焔1999年10月号掲載
白灯集
案内の車に揺られ合歓の花
青胡桃大きな橋を渡りけり
滝音へ歩幅大きくついてゆく
夕立のあと透きとおりドビュッシー
今週の予定書き込み大ひまわり
響焔1999年11月号掲載
白灯集
留学の荷物に加え藍浴衣
長生きの猫二匹いて熱帯夜
深呼吸ひとつ炎天へ歩き出す
蓼の花お寺の前を横須賀線
絵を横抱きに初秋の西銀座
響焔1999年12月号掲載
第26回響焔賞受賞作品
ひまわり 米田規子
雲の峰地下鉄新駅わが町に
スパイスの効いたピクルス熱帯夜
みずいろの水着が似合う十九歳
一房のぶどう仏蘭西に恋をする
蝉時雨森のホテルへ人と犬
ベネチアングラスの館黒揚羽
万緑を沈め海賊船赤し
夏うぐいす甘味処の藍のれん
サングラスかけ閻魔堂に踏み込みぬ
ひまわり大輪アメリカへ子が発ちて
苦瓜と豚肉炒め更年期
練習曲「革命」を弾き緋のカンナ
子をおもい国際電話待つ残暑
秋の日のピアノの上にダリ画集
五十歳からの出発黒葡萄
白灯集
歯応えのあるものを食べ防災の日
天の川エスカレーター乗り継いで
いろいろのタオルを干して雁渡し
赤い橋渡り秋暑の美術館
考えなおし秋鯖を買う列に
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