米田規子 俳句集(2003年)
響焔2003年1月号掲載
白焔集
水引草 (横浜) 米田 規子
子を送るプラットホーム鰯雲
詩のことも水引草の紅ゆれる
蓮の実が飛んで鎌倉材木座
(高野力一抄出)
秋時雨小さな駅に人あふれ
入院の猫に面会おつきさま
響焔2003年2月号掲載
白焔集
紅葉明り (横浜) 米田 規子
紅葉明りキャンパスのジャズピアノ
大きな皿に小さなケーキ冬日向
(北島洋子抄出)
一点を見つめる人形紅葉散る
ボジョレーヌーボー冬霧の横浜港
黄落期マリアの頬のふっくらと
響焔2003年3月号掲載
白焔集
柿の朱 (横浜) 米田 規子
降って来るおとこの声と柿の朱
何回もはじめに戻り冬紅葉
ポインセチア大きな闇の真ん中に
強い糸切れそうな糸年つまる
友達のよくとおる声霜柱
響焔2003年4月号掲載
白焔集
ゆきぐに雪 (横浜) 米田 規子
ゆきぐに雪お菓子の家の小さな灯
氷柱から雫きらきら母と居る
コバルトブルーの魚泳いで冬の駅
(手塚酔月抄出)
おなじもの抱える二人大枯野
女ひとり男がふたり冬林檎
響焔2003年5月号掲載
白焔集
春の声 (横浜) 米田 規子
冬ざるる珈琲店にランプの灯
風光るさかなの目玉くろぐろと
パンジーと黒猫フェリス女学院
(手塚酔月抄出)
一杯の冷たいココア春の月
定年やうぐいす餅にむせており
響焔2003年6月号掲載
白焔集
足音 (横浜) 米田 規子
春疾風かまくら煮豆屋せんべい屋
冴返る小さな星のイヤリング
虹色の春のセーター淋しい日
茎立ちや足音だんだん近付いて
体操のあとの青空チューリップ
(手塚酔月抄出)
響焔2003年7月号掲載
白焔集
桜 (横浜) 米田 規子
むすめ遠くに海棠の紅い雨
ゆり椅子や横浜全景春霞
じゅうぶんに迷い桜に戻りけり
たんぽぽの元気な広場おじいさん
(手塚酔月抄出)
旧友と白き船見る遅日かな
響焔2003年8月号掲載
白焔集
夏木立 (横浜) 米田 規子
五月来るチャイナドレスに金の刺繍
マロニエの花水辺に鳩の三、四羽
母と子にやわらかすぎる緑かな
葉桜の大学病院猫走る
かるがると子は発ちてゆく夏木立
響焔2003年9月号掲載
白焔集
梅雨の蝶 (横浜) 米田 規子
御主人とそっくりな犬さみだるる
考える時間たまわり梅雨の蝶
もやもやと不安カンナの黄色咲き
ペパーミントティ六月の樹々の音
(新井温子抄出)
養生というほどでなく焼茄子
響焔2003年10月号掲載
白焔集
あかるい声 (横浜) 米田 規子
メイド・イン・ドイツ酢キャベツ夏燕
夫の髭にわかに白く心太
雨音と長い手紙とさくらんぼ
プラタナス青実あかるい声が出て
亡き父と大向日葵の角曲る
響焔2003年11月号掲載
特集｢響焔の華(Ⅲ)｣<戦後生れ作家(1)>
白いピアノ 米田規子
くらがりに大きな西瓜生家なり
全山蝉時雨あたまからっぽに
夏の終り白いピアノが音を出す
昼の月真珠睡れるガラス箱
露草の小径をたどりエスプレッソ
海見える家ピカピカの青蜜柑
秋日濃しクッキーを売る修道女
これからの楽しいときを秋の蝶
白焔集
豆の菓子 (横浜) 米田 規子
夏草を刈り母のこと考える
猫が追う蜥蜴のシッポ日照雨
秋暑し甘くて固い豆の菓子
(半澤つや子抄出)
何とたたかっているのか蝉時雨
一点の火星オレンジ夏の果
(大野忠孜抄出)
響焔2003年12月号掲載
白焔集
風 (横浜) 米田 規子
風の中のパンパスグラス印象派
ながい藤の実一人来て一人去る
詩はどこに青い檸檬に風少し
限界とおもいながらも草の花
(半澤つや子抄出)
暑い九月マグロ解体見て帰る